企業内だけでiOSアプリを利用するには?|最新ルールを体験してみた

国内におけるスマホの普及率が100%に近い現代。老若男女問わずスマホを使ってますよね。
企業によっては社員に貸与しているスマホやタブレットで業務用アプリを利用したりしてますよね。
業務専用のオリジナルのアプリを制作して、スマホやタブレットで利用されている企業も多くいらっしゃいます。

今回は企業内でオリジナルのiPhone/iPad用アプリ利用に関するお話です。
iPhone/iPadに特化したお話なので、「うちはAndroid一択じゃい!」という企業様には面白味のない
お話かも知れません。。。ご容赦下さい。

アプリ配信の今昔物語

iPhone/iPadでオリジナルアプリを利用しようと思ったら、
「Apple Developer Enterprise Program(ADEP)」というライセンスを利用するのが一般的でした。

いわゆる、企業内で自由にiPhone/iPadアプリが作れるライセンスです。
「自由に」という意味を言い換えると「AppStoreを経由せず、企業内でアプリが配布可能」と言えます。

通常、皆さんが利用されるアプリは「AppStore」(Androidで言えばGooglePlay)にて購入して利用します。
このADEPライセンスがあれば、作ったアプリをAppStoreを経由せずにiPhone/iPadにインストールが出来ます。
但し、利用可能なのはそのADEPライセンス取得した企業の従業員のみ。
iPhone/iPadが企業内で利用されるようになった頃から昨今まで、各企業はこのADEPライセンスで自由に
アプリを作って利用をしていました。

しかし、、、数年前からApple社がこのADEPライセンスの取得条件が厳格化されました。そして、今ADEPを保有している企業に対しても年に1回の更新条件も厳格化しています。

何故なのでしょう・・・

それは「不正利用」が原因のようです。

色々と文献があるので詳細は割愛しますが、この自由度が高い方法はApple社が定めたレギュレーションを違反する事案を多々発生する事態になっていたようです。

Apple Developer Enterprise Program(ADEP)

  • 企業内で制作したアプリをAppStoreを経由せずに配信可能
  • 利用対象は企業内の従業員のみ
  • 制作したアプリはApple社の審査を通さなくてOK

様々な企業でADEPライセンスを利用してアプリの企業内利用をしている



従業員以外の利用が原因?

  • ADEPライセンス取得条件を厳格化
  • すでに取得している企業でもライセンス更新条件も厳格化

ADEPに変わる代替案

Apple社は年月をかけて、ADEP利用を縮小させようとしています。
当然ながらADEPを利用している企業からしたら「それじゃー、困る!」という事になりますよね。

そこで誕生したのがApple Developer Program(ADP)ライセンスを利用したカスタムAPPというものです。
仕組みは後述しますが、一般的なアプリと同じ方法でAppStoreにてアプリを管理した上で、特定の端末のみに配信して利用できるという方法です。
Apple社もADEPライセンス保有者に対して、ADPライセンスへの移行を勧めています

今回はADEPライセンスで自由に作ったアプリをカスタムAPPにしてみた、という体験記です。

結論から言うと”結構大変”でした・・・

カスタムAPPの配信までの仕組み

カスタムAPPに必要なもの

  •  Apple Developer Program(ADP)アカウント
  •  Apple Business Manager(ABM)アカウント
  •  D-U-N-Sナンバー:ABMのアカウントを作成する際に必要
  •  MDM(なくても出来るけど企業内で利用する場合には必要)
  •  Mac
  •  iPad/iPhone
  •  ソースコード

カスタムAPPの作成~リリース手順

細かい手順を記載すると膨大になりますので、大まかな流れを記します。
非常に多くの手順が必要となる為、なかなか気力が削がれます・・・

 ①ADPアカウントの作成
  ・必要事項を入力してアカウントを作成します(年額11,800円 2025年時点)
  ・証明書とプロビジョニングプロファイルを作成しておきます

 ②ABMアカウントの作成
  ・必要事項を入力してアカウントを作成します(無料)
   ここでD-U-N-Sナンバーが必要となります
  ・Apple側で審査がある為、即時アカウント発行とはなりません
  ・Apple社から電話確認が入ります(当社がやった時には諸事情によりこちらから電話連絡しました)

 ③ABM設定
  ・アプリ配布に利用するMDMサーバ(サービス)との連携を設定します
  ・カスタムAPPを有効化(デフォルトは無効です)します

 ④ビルド~申請
  ・ADPで作成した証明書を使ってソースコードをビルド→AppStoreCoonectにアップロードします
  ・ADP内のAppStoreConnectにて各種設定を行います
   ・入力項目がたくさんあります!根気よく入力します
   ・重要なのはアプリ配信方法で「非公開」を選択、組織IDまたはAppleAccountを選択して
    必要事項を入力します(ここを間違えると一般のアプリと同じになってしまう)
  ・必要事項を入力したら審査申請を出します

 ⑤公開~配信
  ・無事に審査を通過したらAppStoreConnectからアプリを公開設定します
  ・ABMにて該当アプリのライセンス購入を実施するとMDMにて配信が可能となります

やってみた結果

ADEPで制作したモノをADPで審査依頼すると、必ずと言っていいほどreject(審査は通せないよ)が返ってきます。

当然ですよね。自由度が高いADEPで好き勝手作ったものをレギュレーションが厳格化されているADPで審査するんですから。思いもよらない指摘を受ける事になります。

私が実際に経験した指摘例をいくつか列挙します。
(例)
 ・アイコンの透過が規定を満たしていない
 ・審査担当者がデモ操作するからID/Passを連携するように言われる
 ・プライバシーに抵触する項目は利用用途などめっちゃ質問を受ける などなど

いくつかのアプリをADEP→ADPへの移行を実施しましたが、毎回、申請→reject→アプリ修正→再申請→reject→アプリ修正→再申請・・・というループに陥り、審査通過するまで数か月かかった、、、なんて事がありました。

まとめ

如何だったでしょうか。
私もこの記事を書きながら、色んな苦労が蘇ってきました。
審査を通過させる為に地元の神社で厄払いでも受けようか・・・そんな事も考えました。笑

今後、ADEPライセンスで制作されているアプリは徐々にカスタムAPP化されていくと思われます。
「どうすりゃいいんだよー!」という企業様、是非こちらからお気軽にご相談ください。
我々が苦労したノウハウを是非活用させてください!